うなぎ食中毒の原因は?過去にも同様のことはあった?

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神奈川県横浜市の上大岡駅にある京急百貨店の店舗で販売されたうなぎを食べた客が腹痛や嘔吐の症状を訴え、のちに食中毒と判明した事件がありました。原因は黄色ブドウ球菌であったと発表されています。せっかく楽しみにして食べたうなぎでこのようなことがあると悲しいですよね。原因と過去に同様のことがあったのかまとめてみました。

食中毒の原因は?

土用の丑の日に合わせて鰻弁当を数日前から大量に仕込んでいたことが原因であると考えられます。仕込んでから販売までの間で黄色ブドウ球菌が好む環境下で保管されていたことで増殖しエンテロトキシンと呼ばれる毒素が産生されたのでしょう。

ちなみに黄色ブドウ球菌は人や動物の手指、鼻、喉、皮膚などに分布している菌です。特に化膿した傷口には多く存在するため注意が必要です。保菌者がくしゃみをしたり、素手で食品を触ったりすることで、食品に付着します。さらに黄色ブドウ球菌が最も好む30-37℃の環境下で爆発的に増殖します。

当日に仕込んで販売していたらどうだったの?

当日中に食べるのであれば食中毒は起こらなかった可能性が高いと考えられます。

今回は、そもそも黄色ブドウ球菌の持ち込みがあったことも問題ですが、加えてイベントに合わせた普段の調理能力を超えた生産量を確保するために調理から販売までに1-2日かかったことが大きな原因であると考えます。

食中毒の症状や治療法は?

おもな症状は腹痛、下痢、嘔吐です。

潜伏期間は比較的短く、食後30分~6 時間程度(平均3時間)で症状が現れます。

特別な治療法はなく、よく水分をとることが重要です。下痢や嘔吐で失った電解質も補完する必要があるため、水のみではなくスポーツドリンクも併用することが重要です。あと、患者さんで下痢止めを使ってしまう人が時折いらっしゃるのですが、下痢止めはNGです。悪いものを排泄させることが大切なので辛いのですが、、頑張って出しましょう!

通常、1-2日程度で回復すると言われています。

一般的に予後は良好といわれており、死亡するケースは多くありません。

ただ、今回の事件でご高齢の方が一人亡くなったように、高齢者や小さな子供は予備力が低いケースがあるため注意が必要です。

過去の食中毒の事例

1984年10月 東京都で発生した幕ノ内弁当食中毒の事例

ある飲食店が当時開催されたイベント用に600人分の弁当を準備。弁当を食べた198名が嘔吐、下痢、発熱などの症状を訴えた。弁当は提供される前日朝から調理されており、最大で調理から提供まで29時間かかっていた。同飲食店はイベント用に食事を準備した経験はあったものの、当事例ではあきらかにキャパオーバーであり、無理な食品の取り扱いが原因であったとされている。

2005年8月 千葉県のイベントで配布された弁当食中毒の事例

都内の弁当屋から千葉県のコンサート会場にスタッフ用の弁当が配達された。喫食した255名のうち121名が嘔気、嘔吐などの症状を呈した。弁当は、調製後喫食まで4-10時間にわたり常温に置かれていた。

2012年8月 京都府で発生した救援物資での食中毒の事例

京都府で発生した大雨に伴う土砂災害が発生、住民に対し救援物資としておにぎりで提供された。喫食した157名のうち106名に嘔吐、下痢などの症状を認めた。おにぎりは地元のスーパーのバックヤードで従業員により400個製造された。おにぎり製造から配布までには12時間以上を要しており、被災地へ届けるためヘリコプターの準備などしている間に適切な保冷がなされていなかった。また、配布時に早期喫食の案内もなかったため、配布されてから時間が経過してから食べた例も多く認められた。

2023年9月 岡山県のイベントで発生した食中毒の事例

岡山県で行われたイベントで、イベント関係者が差し入れた手作りのおにぎりで9人が黄色ブドウ球菌による食中毒を発症。なお、おにぎりは素手で前日午後11時に製造され、常温で朝まで保管されていた。翌日午前9時から、午後1時までに喫食した。

上記の例は数ある食中毒事例の一部ですが共通点があります。

比較的気温が高い時期

製造から提供までに時間がかかっている

適切に保冷されていない

通常より食品の製造数が多い

イベントなどで大量に食品の提供がなされたり、気温が高い時期は注意が必要ということが分かります。

食中毒を起こさないためには?

手洗いの徹底、可能な限り速やかに喫食する(2時間以内)、食品は10℃以下で保存する、調理器具の洗浄殺菌、手荒れや手指に傷のある人は食品を直接触ったり調理しないなどの対策が有効です。ちなみに、10℃以下では増殖がゆっくりとなるようですが増殖はするため冷蔵保存であれば安心というわけではないことに注意してください。

また、やっかいなのが産生された毒素は加熱で破壊されないため、食べる前に火を通しても残念ながら食中毒を回避することはできません。。。なので、食品に菌を付けないことと菌量を増やさないことが重要なのです。

最近は衛生観念が向上しているからか飲食店にておにぎりを握ったり、調理をする際に手袋をしている場面をよく見かけるよね。

確かにそうですね。ただ、一方で手袋をしたまま顔や周りの棚や調理器具に触れ、そのまま食品に触っている光景もよく見かけます。これでは手の汚れを防止しているだけで、食品の汚染は防ぐことはできませんよね。

私は仕事で手術を行っていますが、オペ室では清潔・不潔エリアが明確に分けられています。

手洗いし、清潔なガウン・手袋をはめたら、清潔エリア外のものに触ったりすることはできません。万が一触ってしまった場合は手洗いをし直したり手袋を変えたりが必要となります。よくドラマで外科医が手を顔の前に上げて入室していますよね?あれは不用意にオペ室内のものにふれあいためのポーズです(実際にあのポーズをしている先生は見たことがないですが。。)。

オペ室ほどではなくとも、食品を触る手袋で食品以外のものに触れたら手袋を変えたり、清潔→不潔で触れるのはokでも不潔→清潔に触れる際には手袋を変えるもしくは手を洗いなおすなどが必要かなと思います。特に忙しかったり、普段のオペレーションとは異なる段取りをする際は食品汚染の原因になるため注意が必要です。

また、自宅でランチを作って外で食べたりも今のような暑い時期はできるだけ出かけるギリギリに調理したり、保冷剤を使用するなど気を付けましょう。

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